お知らせ
舌小帯短縮症について
1舌小帯短縮症とは
舌小帯とは、舌の裏側についているヒダのことを言います。このヒダが生まれつき短かったり、ヒダが舌の先端に近いところについていることがあり、このような状態を舌小帯短縮症といいます。舌を前に突き出すと、舌の先端にくびれができ、ハート型の舌になります。舌小帯短縮症にはいろいろな呼び方があり、舌強直症、舌小帯癒着症、舌癒着症などと言われることもあります。
舌小帯の短縮の程度は、舌の先をどの程度挙げられるかによって、軽度・中等度・重度に分けられます。簡単な判定方法として、口を大きく開け、舌の先を上あごにつけるように持ち上げ、口の大きさの1/2以上挙げられたら軽度。1/2以下しか挙がらなければ中等度。舌を挙げようとしても下顎の歯よりも挙がらないか、全く挙がらない場合は重度と判定します。
軽度では、舌小帯が細い紐のように見えますが、舌先を上あごにつけたり、口の横につけたりすることは自由にできます。ら行音を早く言おうとすると舌がもつれる感じがありますが、日常生活での障害はほとんど見られません。
中等度では、舌を前に出した時に舌先がハート型にくびれます。舌小帯もしっかりした白い紐のように見えたり、ヒダに見えたり、膜のように見えます。舌先を上あごにつけようとしてもつけられず、口の開き方を小さくすれば、なんとか上あごにつけられるという状態です。また、口の横に舌の先をつけることができませんし、唇についた食べ物を舌で舐めることができなかったり、ソフトクリームを舐めるのが難しいという方もいます。
重度では、舌を前に出そうとしても下唇ギリギリくらいまでしか出せず、舌を上に持ち上げることが困難なので、舌小帯が舌の裏に隠れてよく見えない場合もあります。
このように舌小帯短縮の程度が軽度の場合は発音や摂食・嚥下機能に問題があることは少ないので、あまり治療の対象となりません。中等度や重度の場合には、哺乳が上手にできない、話すときに舌がもつれる、硬いものが上手に食べれないといった、哺乳障害、発音障害、摂食・嚥下障害が認められることが多く、治療によって改善することが多いと言えます。
2舌小帯短縮症による発音障害とは
舌症帯短縮症で受診される方の多くは、滑舌が悪い、早口言葉が上手く言えない、早く話そうとすると舌がもつれる、長時間話すと疲れる、といった症状を訴えられます。舌症帯短縮症による発音障害は軽度のことがほとんどですが、舌の運動制限があるために話しづらさを感じている方が多くいらっしゃいます。
具体的な特徴として、
・た行音やさ行音を発音するときに、舌を上下の前歯の間に挟んで発音する歯間音化
・ら行音が歪む
・ら行音が続く単語や早い会話だと発音が不明瞭になる
・口をあまり開けずに小さな声で話す
などの発音障害が認められることがあります。
3治療法
舌小帯短縮症に対する治療法には、手術と機能訓練があります。舌小帯短縮の程度が軽度の場合は、舌を上手に動かすトレーニング(機能訓練)を行うだけで症状が軽減される場合もあります。トレーニングだけでは舌の動きを改善することが難しいと判断された場合には、舌小帯のヒダを切る手術(舌小帯伸展術)を行います。術後は、瘢痕収縮の防止や、動き安くなった舌を上手に使いこなせるようにするため、機能訓練を行います。
4治療に関するQ&A
①手術は何歳くらいから可能ですか?
哺乳障害がある場合などでは、新生児から行うこともあります。(当院では、3歳以上のお子様が対象となり、3歳未満のお子様の場合、全身麻酔が可能な小児専門の医院をご紹介致します。)舌小帯の短縮程度や、機能障害の程度により手術の時期を決定致します。
②手術をするのに入院が必要ですか?
通常は外来にて局所麻酔下で処置を行いますが、局所麻酔での処置が困難な場合には入院が必要になることもあります。(入院が必要な場合には、専門の医院へご紹介致します。)
③手術の時に全身麻酔が必要ですか?
通常は舌に局所麻酔をするのみです。ただし、低年齢のお子様の場合、全身麻酔による手術を検討することがあります。
④手術中や術後は痛みはありますか?
局所麻酔前に、事前に表面麻酔の塗り薬を塗ってから注射致しますので、極力疼痛が少ないよう配慮しております。術中は痛みはありませんが、術後麻酔が切れると痛みが出てきます。軽度であれば、切除部位が少なく疼痛も少ないですが、中等度、重度の場合には、切除面が大きくなるので、術後疼痛も大きくなります。痛み止めを処方しますが、翌日には痛みが引くことが多いです。
⑤手術した日はご飯を食べれますか?
痛みの状態にもよりますが、舌の麻酔が切れた後で食事は可能です。刺激の少ない食べ物を召し上がったいただくことをお勧めしています。
⑥手術は保険適用ですか?
保険適応となります。
⑦手術後も通院が必要ですか?
当院では、手術に際して炭酸ガスレーザーを使用していますので、1日日帰りでの処置が可能です。場合によっては、翌日消毒等、術後の経過を観察させていただく場合もございます。
⑧手術をするだけで、発音が上手になりますか?
手術を行うことで舌の運動範囲が広くなりますが、発音障害は必ずしも改善する訳ではありません。これまで舌小帯短縮症により舌が動きにくい状態にあった状況で、舌の筋力が弱かったり、正しい発音をするのに必要な舌の動きを経験してこなかったことによるためです。このため、術後に舌の機能訓練を行う必要があります。
そのほかご質問等ありましたら、当院へご連絡ください。
2023.03.17